無伴奏ヴァイオリンのための三章
かつて、作曲した「無伴奏ヴァイオリンのための四章」を一年あまりかけて改訂。そのほとんどの時間は終楽章であったのだが、先日完成して、ヴァイオリニストのところにお届けした。 その楽譜に、前文を載せた。 それを以下に記載する かつて、神戸フィルハーモニーのコンサート・マスターを長く務めた
親友の福富博文氏の委嘱により、2012年から一年かけて作曲した「無
伴奏ヴァイオリンのための四章」がこの作品の元となった。
福富氏の演奏会の企画は、彼の腕の故障によるソロ活動からの引退に
より演奏会の企画が消え、この作品は宙に浮いてしまうことになった。
その頃、私が奉職する学校で、コンクールに向けた授業があり、すで
に宙に浮きかけていたこの作品を出してみたところ、入選してしまった。
その時に演奏の機会がなくも無かったのだけれど、私は辞退した。
そして2019年3月2日。福富氏はわずか60年の人生を終え、天国へと
旅立ってしまった。
私は、彼の訃報を聞いた時、この曲を永遠に封印しようと考えていた。
その直後だった。鎌倉での演奏会に向けて「さくら」の編曲を旧知の
ピアニスト、松本有理江さんから娘さんの紘佳さんのために依頼された。
その時、東日本大震災の追悼の週であったので、その前年に作曲した
「ラメント〜万灯会の夜に〜」を提案したのだが、わずか数日後に松本
さん親子はそれを見事に演奏したのだった。
私は、福富氏の引き合わせのように感じた。
鎌倉、二階堂にある小さなホールでの演奏は好評で、その後、ハンガ
リーのブダペストでの演奏会でも演奏され、好評を得た。
以来、一年あまりにわたって、紘佳さんの音を想定し、彼女の小さな手
に合うように、改訂する作業を行ってきた。
四つの楽章から「フーガ」を取り除き、三楽章制にし、第2楽章には、
大きく手を入れ、最初の曲からはずいぶん様変わりしたが、作者として
は、満足できる出来映えとなった。
第1楽章はリズムの遊びである。アクセントを生かして動きの面白さ
を目標にした。
第2楽章は、三味線の音合わせ、そしてリズミックな三味線をイメージ
したピツィカート主体の音楽が続く。
終楽章は、主題と6つの変容である。STEPは段目のことで、元々は
無調で書かれたものだったが、今回の改訂で調性のフィールドへと変更
した。
この作品は、福富氏の御霊に、そして若い才能、松本紘佳さんに謹んで
献呈したい。
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